トーマス・ルフは現在、同門のアンドレアス・グルスキーと共に世界最高の写真家として知られています。
アンドレアス・グルスキーの作品は、オークションで3億円以上の値が付くほどの価値があり、トーマス・ルフの作品も相当な額で取引されています。
そんなトーマス・ルフの作品の魅力とは一体何なのでしょう?
凄い経歴と共に紹介したいと思います!
目次
トーマス・ルフってどんな人?
トーマス・ルフ
プロフィール
生年月日 1958年2月10日
出身地 ドイツ・ツェル・アム・ハルマースバッハ
学歴 デュッセルドルフ美術アカデミー卒
略歴
1977年 デュッセルドルフ美術アカデミー入学
1981年 初個展
1992年 ドクメンタ9出品
1995年 ベネチアビエンナーレ出品
1996年 シドニービエンナーレ出品
2000年 デュッセルドルフ美術アカデミーの教授に就任
2002年 サンパウロビエンナーレ出品
2005年 ベネチアビエンナーレ出品
2012年 ハウス・デア・クンスト(ミュンヘン)で大規模な個展を開催する
2016年 東京国立近代美術館で日本初個展を開催
トーマス・ルフの作品の魅力とは?
トーマス・ルフやアンドレアス・グルスキーの写真は、写真と言っても普通の写真作品とは違っていて、そこに写ってるものをただ漠然と見るのではない作品です。
では、何を見るのかと言えば、その写真を撮るに至った「コンセプト」を見ます。
要するに「何でこれを撮ったのか?」「この画像にどんな意味があるのか?」と言う概念を見る作品です。
これは現代美術全般に言える事で、「なに」を描いてるのか?「なに」を撮ってるのか?は重要では無く、「なぜ」それを描くのか?「なぜ」それを撮るのか?が重要なのです。
なので、その被写体自体に大した意味は無く、その作品を作る「背景」や「考え」にこそ真の意味を見出すのが現代美術です。
だからトーマス・ルフの作品も、普通に写ってる写真だけを見るとただのポートレートだったり、部屋の写真だったり、星の写真だったりします。
しかし、そのポートレートを普通サイズから巨大な2mサイズに引き延ばす事で、それはただの写真ではなく、「絵画では表現できないクオリティ」の画像へと変わります。
また、星の作品はトーマス・ルフが考える「最も客観的」な作品として撮られています。
要するに、どんな写真も結局は撮影する人の「主観」で撮られています。
風景写真も、自分が位置を変えれば違った主観の風景が撮れます。
しかし、天体写真はあまりにも遠くに離れてる為、撮影者は自分の意思で対象を変える事が出来ず、撮ると言うより記録するしかありません。
なので、天体写真こそが「一番客観的な写真」と言う考えで、作品を作っています。
このように、作者の考えてる理念などを知って作品を見ると「なるほど~」と思ったり、自分とは違う新たな価値観が生まれて面白い経験をする事があります。
そう言った経験が出来るのが、トーマス・ルフやアンドレアス・グルスキー、日本では杉本博司と言った現代写真家の魅力なのかな?と思います。
トーマス・ルフの創作の秘密とは?
トーマス・ルフはデュッセルドルフ美術アカデミーで、主にベッヒャー夫妻の指導を受けました。
ベッヒャー夫妻とは、60年代から活躍するドイツ出身の世界的な写真家です。
1990年のヴェネツィア・ビエンナーレでは、ドイツ代表として金獅子賞を受賞しています。
そんなすごいアーティストの下、トーマス・ルフは合計9年間もデュッセルドルフ美術アカデミーに在籍して学んでいます。
最初はベッヒャー夫妻の模写から始まり、だんだん自分の考えで作品を撮るようになりました。
ある時「ドキュメンタリー作品は白黒で撮るべき」とベッヒャー夫妻に教えられたのに、独断でカラー作品を撮って見せた事がありました。
するとベッヒャー夫妻は「この方がずっといい。あなたは白黒をスキップしてカラーでやりなさい」と、自分の考えを押し付けるのでは無く、生徒の特性を生かした指導をされたので、トーマス・ルフも才能を伸ばせたのだと思います。
そうして、自分の感性を生かした作品作りをするようになったトーマス・ルフは、高さ約2メートルにもなる巨大なポートレート作品で注目されるようになります。
そして、その後も建築、都市風景、ヌード、天体などさまざまなテーマの作品を展開して行き、世界的なアーティストになりました。
創作の秘密
デュッセルドルフ美術アカデミーで教授をしていた時、「有名になるには”何”を撮ればいいですか?」と言う質問をよくされたそうです。
それに対して、トーマス・ルフの答えは、アーティストに必要な事は「新しいイメージを見つける事と、一つのテーマに固執する事無く、次に繋がるアイデアをどんどん出す事」と言っています。
有名になるかどうかを先に考えるのではなく、まずはアイデアをどんどん出すマインドを強くする事が大事だと言う事です。
やはりアーティストとしてやっていく為には、人が考えつかないようなアイデアをどんどん出して創作していくしかないのだと思います!
その言葉を裏付けるように、最近のトーマス・ルフの作品は、もはや自分で撮影すらしていません。
今はインターネットにある画像を使って、「写真の在り方」について模索する作品を作っています。
この先、写真という分野がどこまで進化するのか?
トーマス・ルフの作品には今後も注目です!